ねこさん (女性) からのお悩み
私は今、小児科に勤務しています。
一人の患者さんを初めて受け持った日、患者さんの親の前で処置をしたところ、親がやっていた方法を知らなかったため「こうやって下さい」と指摘を受けました。その時は「あ、すみません」と、手技を変えて処置をしました。
次の日、師長から、「あちらの親御さんから『あの人は、子供をわかっていないから、受け持ちから外してほしい』と言われたから、しばらく外すね」と言われ、その患者の受け持ちを今は、外されています。勿論、不安にさせてしまったのは私ですので、そこは寂しいですが、適切と思っています。
そしてその時に、師長に「なんかね、『数年前も、あの人にお世話になってるんですけど、その時もわけわかんなくて…』って。あんた、なんかやったの?」と言われました。
私は、ここがとてもショックなのです。
正直、看護師やって15年以上…一度も患者さんやその家族とのトラブルはありませんでした。「私はそんなに酷い看護師なのだろうか?」と気になってしまいます。
師長に今回の事を親御さんにお詫びするべきか聞いたところ、「今はその時じゃないから、詫びる事はないよ。親御さんの余裕がない時期なんだよ。だから気にしなくていいよ」と言われ、親御さんに話しかけてもいない状態です。
私としては、数年前にどんな失態を犯してしまったのかを聞きたいと思ったり、聞くのが怖いと思ったり、せめて今回の手技の違いをお詫びするべきだと思ったり、話すのが怖いと思ったり…
受け持ち拒否されるほど、関係が壊れた患者さんやその家族に対し、私はどうするべきでしょうか?
椿(ツバキ)からの回答
今は、ある程度の距離と時間が必要なのでは
ねこさん、こんにちは。椿です。
お返事が遅れてしまい申し訳ありません。
もう解決されているかもしれませんが、まずはねこさんのお悩みの根本を考えてみたいと思います。
患者が小児の場合、特にその母親との関わりは重要
私にも子どもが2人います。上は9歳、下は3歳です。今年の秋、この2人が立て続けに同じ感染症で入院しました。
患者さんを区別するわけではありませんが、小児の患者さんって、やっぱり成人の患者さんとは違います。
患者さん本人ももちろん重要なのですが、患者さんの家族、特に母親との関わりが非常に重要になるのです。
私の場合、自分が以前勤務していた病院への入院でしたし、上の子はもっと小さい頃にも入院していますから、小児科病棟の看護師の顔も数人は覚えていました。
「そういえば、前回の入院の時にはこんなこともあったな」とか、数年前のことなのにかなり色々なことを覚えています。
こんな風に、母親って、子どものことになると鮮明に覚えているものなんですよね。まずは、小児患者さんの親って、そういうものだと思って下さい。
そして、さらに厄介なのは、”悪いこと”こそよく覚えているということです。
看護師側にとっては、日々の勤務の中の小さな出来事でも、小児患者さんの家族からすれば非常にショッキングな出来事で、忘れられない記憶となってしまうことはあります。
ねこさんのお悩みの本質は…
ねこさんのお悩みの中に「なんかね、『数年前も、あの人にお世話になってるんですけど、その時もわけわかんなくて…』って。あんた、なんかやったの?」と師長にいわれた、とありますが、本当に思い当たることはありませんか。
恐らく、師長が知らないことなのであれば、その小児患者さんの家族からも、大きなクレームは無かったのかもしれません。
しかし、親御さんはずっと覚えていたわけですから、きっと何かしら、ねこさんが”やってしまったこと”があったのだと思います。
自分が”やってしまったこと”が分からなくて、どう対処すれば良いのか分からない、というのが、今回のお悩みの本質ではないでしょうか。
不快感を与えてしまった相手、その状況によって対処法は異なる
「自分では気づかない内に、相手を不快にさせてしまったかな」ということって、誰にでも多かれ少なかれあると思うんです。
これを小児患者さんの家族という特殊な状況ではなく、例えば、自分の友人や家族という普通の状況で考えてみましょう。ねこさんは、そんな時どうしますか。
相手に『自分のどの行動が不快感を与えたか』をいちいち聞き出しますか。
それとも、自分で『自分の行動をじっくりと振り返り、何が悪かったのか』を考えてみますか。
私は、これに正解は無いと思います。なぜなら、相手や状況にもよるからです。
相手が「ここが嫌だった」とすんなり話してくれそうなら聞いてみるのも良いかもしれません。
しかし、相手が「そんなことも言われないと分からないの!?」と怒り出すようなら、しばらく距離を置いて、自分でじっくりと考えてみるのも良いでしょう。
距離と時間があけば、相手も冷静になれると思います。
なぜ小児患者さんのご家族に注意されたのか考えてみる
では話を戻します。
今回は、小児患者さんの家族から「担当を外してほしい」と言われているいるんですよね。
もしかすると、単に”ウマが合わない”ことから、必要以上に厳しく見られているのかもしれません。
具体的にどのような処置を行っている時なのか、小児患者さんに不快感を与えた言動が何なのかが分からないのですが、患者さんのご家族にそう言わせてしまった何かが、ねこさんにもあったのだと思います。
『一人の患者さんを初めて受け持った日、患者さんの親の前で処置をしたところ、親がやっていた方法を知らなかったため「こうやって下さい」と指摘を受けました』とありますが、今回、なぜ小児患者さんのご家族に注意されたのかを考えてみましたか。
その小児患者さんに対して手法を行う際に、『どのようなやり方がベストなのか』を決める要素は、小児患者さんの病状、処置の内容、体格、性別など、いくつかありましたよね。
その中で、ねこさんが選んだ方法が、相手に不快感を与えてしまったのですから、どこかで何かの判断を間違ったのだと考えます。
そして、その結果「あの人は、子供をわかっていない」という言葉につながったのだと思うんです。
他の患者さんやご家族とはそういうトラブルが今までは無いのだとすれば、やはり原因はねこさん自身にあるか、ねこさんとその親御さんとの関係性にあるか、になると思います。
今は距離をとって、静かに見守ること
ねこさんは、自分がどうすれば良いかを悩んでいましたよね。
「私としては、数年前にどんな失態を犯してしまったのかを聞きたいと思ったり、聞くのが怖いと思ったり、せめて今回の手技の違いをお詫びするべきだ…と思ったり、話すのが怖いと思ったり…」
このお悩みを頂いた時点ではまだ、ねこさんの気持ちも揺れていたのだと思います。
そういう時は、師長さんが仰るように
『今はその時じゃないから、詫びる事はないよ。親御さんの余裕がない時期なんだよ。だから気にしなくていいよ』という時なのではないでしょうか。
子どもが入院した時の親の気持ちを、もう一度考えてみてください。
必要以上に神経質になり、色々なことにピリピリしていることは理解できますよね。そんな時に、過去の不快感を思い出させることが、その親御さんにとって本当に良いことでしょうか。
入院している子どもにとっても、自分の親がピリピリしている状況は決して良いことではありません。師長さんが仰っているのは、そこなのでしょう。
そういう時期にとるべき行動は、担当ではなくなっても、親御さんに近づきすぎず、放置もしないことではないかなと思います。
「話しかけてもいない状態」とのことですが、廊下で会えば会釈するくらいの距離感を保てば良いのではないでしょうか。
一番やってはいけないのは、見て見ぬふりです。
こういった”相手の気持ちを逆なでする言動”は取らず、状況が変わるまで静観するのがこの場合は良いのだと思いますよ。
人に不快感を与えてしまったときには、相手に不快感を与えてしまった要素が自分のどこにあったのか、時間をかけて考えてみるとよいのではないでしょうか。
ある程度の距離と時間をおくことで、自然と解決することもあります。
ただし、自分の行動を振り返ることは、忘れてはいけないと思いますよ。