罨法(温・冷)

罨法(温・冷)【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2012年2月27日
最終更新日:2017年10月21日
(変更日:2020年5月16日) ※

罨法】とは身体の一部を温めたり冷やしたりすることで症状を和らげたり、鎮静・鎮痛効果を得るものです。大きく分けて2つあり、それぞれ適応となる症状は違います。

まず温罨法は、局所の血管拡張、血液やリンパ液の循環促進、細胞の新陳代謝を促す、知覚神経に作用して筋の緊張を和らげる、などの効果が期待できます。炎症や受傷したからの急性期には行いません。

一方の冷罨法は、血管の収縮、血液やリンパ液の循環を抑制、組織の代謝低下、炎症抑制などの効果が期待できます。ただし連続して冷やし過ぎると逆に血管が拡張したり、乳幼児や高齢者では急激に冷やすことでショック症状を呈する場合もあります。

罨法は看護師の判断で実施するものです。身体を温める・冷やすだけは家庭でも行われますが、専門職たるもの、ポイントを抑えた技術を提供しましょう。

【罨法実施時のチェックポイント】

では、具体的にどんなことに注意すればよいか、ポイントを挙げてみます。

  1. 患者さんの状態を把握し、適応があるかを判断したか
  2. 目的に応じたて使い分けができているか
  3. 罨法による熱傷や凍傷などの予防策を講じたか
  4. 患者さんの快適と感じる感覚を重視したか
  5. 罨法実施後の全身状態を確認したか

患者さんの状態を把握し、適応があるかを判断したか

まず1.についてです。例えば検温時に熱発していれば冷罨法、腸蠕動が悪いなと感じたら温罨法など、すぐに思いつきそうですね。

しかし例えば温罨法の場合、消化管出血や出血傾向がある場合は基本的に実施しませんし、意識障害や知覚鈍麻がある場合には十分注意します。また、循環不全や血栓ができやすい状態の患者さんに冷罨法を実施する際も十分に注意しましょう。

さらに、体温が高い時には悪寒の有無・末梢の冷感などを観察し、まだこれから体温が上がる場合は温罨法、体温が上昇しきった時点で冷罨法に切り替える、といった判断も必要です。

目的に応じたて使い分けができているか

次の2.は1.とも合わせて考えます。単純に温める/冷やすだけではなく、罨法を実施する目的は何か、それによりどんな効果を得ようとしているのか、患者さんの状態に即しているかを考えます。

罨法による熱傷や凍傷などの予防策を講じたか

次の3.は、どちらにも言えることです。罨法は通常の患者さんの体温よりも高い/低いものを貼用しますので、温度差がありすぎ、一部だけに触れるような貼用の仕方、長時間の貼用など、様々な要因で接触部位への組織障害を起こします。

患者さんに栄養状態の不良・知覚の鈍麻などがある、または乳幼児や高齢者に実施する場合はさらに注意深く行います。

患者さんの快適と感じる感覚を重視したか

次の4.は意外と見落とすかもしれません。教科書的にはこれくらいの温度と思っていても、患者さんが苦痛に感じる温度や部位であれば、適宜調節します。

法実施後の全身状態を確認したか

最後の5.も忘れてはいけません。終了直後の肌の状態を視診するだけではなく、例えば蠕動促進のための温罨法であれば腹部の視診・聴診・触診を行い、患者さん自身に効果がみられたかを確認します。

また冷罨法であれば貼用位置のずれ等は無かったか、無意味な圧迫は無かったかなど、その周囲まできちんと観察し、目的が達成できているかを確認しましょう

【罨法が不十分であると感じたら】

罨法の実際の方法、使用する器具などは病院によって異なりますよ。その手順に従っても十分な効果が見られないこともありますが、患者さんの様子も併せて観察し、必要と判断したらしばらく時間を空けて再度貼用することも検討します。

その時も一人で判断せず、リーダーなどに確認できると良いですね。

というわけで

いかがでしたか?今回は看護師技術の基本である「罨法」についておさらいしてみました。

熱がでたら氷枕、腰が痛かったら温湿布など、誰でもすぐに思いつきますよね。でもこれを看護技術として提供する際には、基本に立ち返り、その後の観察なども十分に行うようにしましょう。

温罨法・冷罨法について、もっと詳しく知りたい方はこちらもどうぞ

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