全身清拭

全身清拭【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2016年6月28日
最終更新日:2020年07月30日
(変更日:2020年8月4日) ※

目的

  • 全身の皮膚を拭くことで、清潔を保つ
  • 入浴やシャワー浴の許可がない患者さんに行う

必要物品・準備

  • 清拭用タオル、またはウォッシュクロス
  • 石鹸、または清拭剤
  • タオル等を洗うためのベースン
  • お湯(清拭用蒸しタオル等がある場合は不要)
  • バスタオル 数枚(患者さんの体を覆うため)
  • 更衣用の下着、衣服
  • ディスポーザブル手袋(臀部・陰部の清拭時には必ず着用する)

方法

1. 患者準備

  1. 患者さんに清拭の目的を説明し、了解と協力を得る
  2. 室温調整(24℃程度)を行い、必要物品を準備する
  3. カーテンやスクリーンでプライバシーを保護する
  4. バスタオルやタオルケットなどを用いて、露出を最小限にする

2. 清拭用のタオル、またはウォッシュクロスの準備

  1. お湯で湿らせたタオル、またはウォッシュクロスをしっかり絞る
  2. 適当な大きさに折る
  3. 看護師の、利き手の親指と人差し指の間に、タオルまたはウォッシュクロスを深く入れる
  4. タオルまたはウォッシュクロスの縫い目や端が内側になるように折る
  5. 看護師の手から大きくはみ出さない程度の大きさまで、タオルまたはウォッシュクロスの端を手のひら側からしっかり入れ込む

3. 清拭

顔面

  • タオルで顔の表面を蒸し、利き手の反対の手で軽く頭部を支え、目頭から目尻方向に拭く
    • 左右の目はタオルの面を変える
  • その後、額、鼻、頬、耳まわりの順で全体を拭く

  • 患者さんの顎を支えて少し拳上させて、首回りの皮膚を伸展させながら拭く

上肢と手

  • 末端から中枢へ向けて拭く
    • 手を拭く時は手関節を、前腕・上腕を拭く時は肘関節を支える
    • 腋窩はくぼみにタオルを沿わせて拭く

胸部

  • バスタオル等で覆いながら片側ずつ露出させ、片手で身体を支えながら、肋骨と筋層に沿って拭く
    • 女性の場合、乳房を持ち上げながら、皮膚が重なっている部分も忘れずに拭く
    • 側腹部も忘れずに拭く

腹部

  • 前面は腸の走向に沿って拭き、側腹部は縦方向に拭く
    • 腹部の皮膚にたるみがある場合は、伸展させながら拭く
    • 臍がひどく汚れている場合は、オリーブ油と綿棒で垢を柔らかくしてから拭きとる

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下肢

  • バスタオル等で覆いながら片側ずつ露出させ、末梢から中枢へ向けて拭く
    • ADLに問題が無ければ、膝関節軽く屈曲させ片手で下から支えると安定する
    • 下腿、大腿は長いストロークで拭き、足関節から先は踵部を支えて拭く
    • 足関節から先は足浴が望ましいが、難しい場合は指の間もしっかり拭く

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背部

  • 側臥位にし、バスタオルで胸部側を覆い(一部を身体に下に敷きこむと良い)、タオルで一度背部全体を蒸してから、筋の走向に沿って拭く
    • 左右に分けて考え、一度腰部から後頸部まで直線で拭き、後頸部から腰部までをらせん状に拭き、反対側も同様に拭く

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臀部

  • 臀部のみを露出し、片手で身体を支えながら、下用(臀部・陰部用)タオルで臀部の丸みに沿って拭き、肛門周囲は最期に拭く
    • 左右と中央を分けて考え、1回ずつ面を変えて拭く
    • 患者さんが自分で拭けるようであれば説明して自分で拭いてもらう
    • 陰部は可能な限り陰部洗浄が望ましい
    • 男性の場合、陰茎周囲、包皮の内側、陰嚢の裏も忘れずに拭く

陰部

  • 陰部のみを露出し、下用タオルで前から後ろに向けて一方向で拭く

4. 最後に

  • 新しい下着と衣服を着せ、寝具を整える

観察項目

  • 全身の皮膚症状の有無をしっかり観察する
    • 乾燥・発赤・浮腫・褥瘡・傷などがないか
  • 便秘・下痢などの腹部症状がある患者には、腹部症状も一緒に観察する
    • 腹部緊満の有無・腹痛の有無など
  • ドレーンが入っている患者は、ドレーンの挿入部の皮膚症状も一緒に確認する
    • 発赤の有無・挿入部からの出血の有無・浸出液の有無・固定部のずれがないか・きちんと固定されているか・ドレーンからの排液の状況や排液の性状など
  • ベッド上臥床で過ごしている患者の場合には、足背動脈なども確認し、動脈血栓症の有無も観察する
  • 術後の患者などの場合には、清拭を行うことによる疼痛の状況も、本人への確認と表情などから観察する
    手術や侵襲の大きな処置を受けた患者など、清拭による疼痛の増強が予測される場合には、本人とも相談し、必要に応じて清拭前の疼痛時指示薬を使用することもある

アセスメント

  • 全身の観察後、皮膚トラブルなどの異常を発見した場合には、看護師(リーダー)や必要に応じて医師へ報告し、適切な指示を受け、必要な処置を行えたか
  • 便秘がある患者の場合、必要に応じて内服・浣腸などの処置が行えたか
  • ドレーン挿入部のトラブルやドレーンからの排液の異常に気付いた場合、看護師(リーダー)や医師への報告、適切な処置を行えたか
    • ドレーン排液の状況で、急激な出血や感染が予測される場合には、すぐに医師へ報告し、バイタルサインや全身状態の確認が必要
  • ベッド上臥床で過ごしており、下肢の自動運動が難しい患者の場合、適切なケアが行われているかを確認したか
    • 静脈血栓予防の為に弾性ストッキングを着用する
    • フットポンプを使用する
    • 看護師側で、回数を決めて、足関節の底背屈運動を行う など

注意点

  • 清拭は必要な処置であるが、必ず患者側の合意を得たうえで行うこと
  • 必ず、バイタルサインに注意して行い、必要であれば部分清拭に切り替えるなど、臨機応変な対応を行う
  • 清拭タオルは、時間が経つと冷たく感じやすいため、適宜お湯につけてるなどして、冷感を感じさせないようにする
  • プライバシーの保護の為、必要以上な露出を避けた援助を行う
  • 浮腫がある場合や高齢の患者の場合には、少し強くこするだけでも皮膚剥離につながる為、十分に注意する
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