目的
病態を理解し、異常の早期発見・対処に努め、合併症を予防する
疾患の概要
慢性硬膜下血腫とは
- 軽度の外傷などにより硬膜下に出血が起こって血腫ができ、この周囲に被膜(外膜・内膜)が形成される
- 外膜は肉芽組織であるため血管に富んでおり、容易に出血を繰り返すことで徐々に血腫が増大する
- 硬膜下血腫のなかでも、外傷後1~2ヶ月以上経過したものを慢性硬膜下血腫という
原因と危険因子
- 軽度の外傷によるものが80~90%、特発性のものが10~20%認められ、後者は大酒家に多い
- 好発年齢は60~70歳以上。若い人で発生することもある
- アルコールの多飲、脳萎縮、抗凝固薬の内服や肝機能障害などによる凝固能低下などが危険因子といわれている
症状と経過
- 軽度の外傷による微小な出血が徐々に増大するため、外傷から3週間以上経過してから症状が出現する
- 軽度の頭痛やおう吐で始まることが多く、徐々に認知障害、片マヒなどの運動障害、尿失禁などがみられるようになる
- 重症化すると、瞳孔不同や重度の意識障害がみられる場合もある
検査・診断
- CT所見:血腫の像が高吸収域から低吸収域に継時的に変化するため多様な像が存在し、脳室の偏移、脳溝の消失なども認める
- MRI所見:硬膜下水腫やクモ膜嚢胞との鑑別に有用であり、一般的にT1・T2ともに高信号域を呈する
- 脳血管障害、脳腫瘍、認知症、正常圧水頭症などとの鑑別診断が必要となる
治療
- 無症状の場合:経過観察とする
- 神経症状がみられる場合:穿頭ドレナージ術を行うが、洗浄法(血腫腔内の洗浄を行ってドレーンを留置する方法)と、非洗浄法(洗浄を行わず、 ドレーンの留置のみとする方法)に分けられる
- 硬膜下ドレーンの留置期間は1~2日程度であることが多い
観察項目
- バイタルサイン、意識レベル、神経症状、瞳孔所見、頭痛の有無
- 精神障害(認知障害)、尿失禁の有無
- 外傷歴の確認、本人の理解度
- 手術を行った場合、術後の全身状態の観察、症状の改善の有無
- 創部・血腫腔内ドレーンの観察(再出血に注意)
- ADLの変化、リハビリの状況 など
アセスメント
- 意識障害を伴う症例も多いが、瞳孔所見等、神経症状の変化に注意して観察したか
- 麻痺を認める事が多いが、転倒・転落等のリスクを念頭に置いたケアを行っているか
- 術後は血腫腔内にドレーンが留置されていることが多いが、ドレーンの管理がしっかり行えているか
合併症予防
- 術後合併症には急性硬膜下血腫、脳内血腫、脳腫脹、硬膜下緊張性気脳症、けいれんなどがあるため、異常の早期発見・対処に努める
- 術後は感染に注意し、ドレーンや創部の管理を行う
注意点
- 高齢者の場合軽い外傷の既往を思い出せず、認知障害があると認知症と誤認されることも多いため、家族などへの聞き取りも重要
- 血腫腔内ドレーンの管理においては、以下の点に注意し、必要に応じて速やかに医師へ報告する
- 血液排液の増加:出血の疑いがある
- 流出消失:流出が突然停止した場合、閉塞の可能性があり、頭蓋内圧が亢進する危険性があるため、ドレーンの屈曲などが無いかを確認する