目次
目的
- 手術の流れを理解し、適切な器械操作および手術介助ができる
- 手術の経過を把握し、緊急の場合に備えることができる
手術の概要
- 病巣の切除および胃癌根治手術の目的で、リンパ節郭清を行う
- 切除する胃とともに、郭清したリンパ節を摘出する
- 消化管再建(吻合)は、術後の消化液の逆流を抑えることが重要となる
- 胃の切離、消化管再建には、自動吻合器を用いることが多い
術前評価と患者の特徴
術前評価
- 術前評価として、主に以下の検査を行う
- 血液検査:感染症の確認、肝機能・腎機能・凝固能・耐糖能・貧血や栄養状態の評価を行い、必要な場合は輸血や栄養状態の改善を図る
- 胃透視検査:病変の大きさや広がりを確認し、切除範囲を決定する
- 上部消化管の内視鏡検査:病変部の範囲や形状の確認の他、病理組織検査のために生検を行うことがある
- CTスキャン:多臓器への浸潤、遠隔転移、リンパ節転移について評価する
- その他:呼吸機能検査、胸腹部X線検査、負荷心電図など
患者の特徴
- 胃癌などの病巣が、胃の中下部(幽門側)に存在する場合が適応となる
- 術前には経口摂取制限が行われているため、脱水・低栄養・電解質異常などをきたしていることがある
- 腫瘍からの出血がある場合は、貧血傾向になっている可能性がある
手術の流れ
- 患者入室後、モニター症着
- 側臥位となり、硬膜外麻酔を施行する
- 仰臥位に体位固定し、全身麻酔を開始
- 膀胱留置ドレーン挿入、直腸温計挿入
- 消毒、ドレーピング
- 執刀
- 開腹
- 大弯側・幽門上のリンパ節郭清、および血管処理を行う
- 胃と十二指腸の間を切離する
- 総肝動脈から脾動脈周囲までのリンパ節郭清、および血管処理を行う
※超音波凝固切開装置を使用する場合、組織損傷を起こす可能性があるため、ブレードが周囲組織に接しないように注意する - 噴門部小弯側のリンパ節郭清を行う
- 胃を噴門側で切離する
※ここで検体が出るが、器械盤の上に保管しておくか、すぐに下す(外回り看護師が受け取る)のかを、医師に確認する - 残胃と十二指腸の吻合を行う
- 腹腔内の洗浄、止血確認を行う
※腹腔内洗浄で使用する温生食を、清潔術野に補充できる様に準備する
※必要な温生水の量は症例により異なるため、施設ごとのマニュアルなどで確認しておくこと - ガーゼカウント、器械カウントを行う
- ドレーン留置
※ドレーンの留置本数およびドレーンの先端部位を術者へ確認し、病室看護師へ申し送る - 閉腹
※トータルでの出血量をカウントし、麻酔科医・術者へ報告する - 閉創後、ドレッシング
- 麻酔覚醒
- 退室
看護のポイント
麻酔
- 全身麻酔
- 硬膜外麻酔
※抗凝固薬内服の既往なあるなど、出血のリスクが高い患者の場合は、状況により判断される
体位
- 仰臥位
トラブルへの対応(器械出し看護師)
- 腸管吻合用の針糸の準備
※吻合が不十分な場合の補強、吻合器が使えない場合の手縫いに使用する
トラブルへの対応(外回り看護師)
- 術中の徐脈や低血圧に注意する
※臓器の牽引により迷走神経反射や腹腔神経叢反射が出現することがある
術式変更の準備
- 術式変更時に備えて器械を準備しておく
※癌の浸潤により、肝臓・脾臓・横行結腸の合併切除が行われることがある
術後のドレーン管理
- 移動時にドレーンなどの付属物が抜去されないよう注意する
病室への申し送り事項
- 術式、トータルでの出血量、ドレーンの本数や留意部位など
- 麻酔方法、現在確保されている輸液ルートの本数および部位など
- 術中に使用した輸血や血液製剤など
- 麻酔中に起こったバイタルサインの変化や、それに対して使用した薬剤の量や最終使用時刻など
- 体位固定(仰臥位)による影響として、後頭部・仙骨部・踵部などの発赤、上腕部の過伸展などのトラブルの有無