目的
- 手術の流れを理解し、適切な器械操作および手術介助ができる
- 手術の経過を把握し、緊急の場合に備えることができる
手術の概要
- 局所麻酔で行うこともある
- 鼠径ヘルニアには、内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアがあり、ヘルニア嚢の処理とヘルニア門の修復が重要
- 腹腔鏡でおこなわれる場合もある
術前評価と患者の特徴
術前評価
- 術前評価として、主に以下の検査を行う
- 血液検査:感染症の確認、肝機能・腎機能・凝固能・耐糖能・貧血や栄養状態の評価
- 腹部所見
- CTスキャン
- その他:呼吸機能検査、胸腹部X線検査、負荷心電図など
患者の特徴
- 男性が90%
- 内鼠径ヘルニアが中高年、外鼠径ヘルニアが小児から成人に多い
- 泌尿器科の手術(前立腺など)の後に発症することがある
手術の流れ
- 患者入室後、モニター症着
- 側臥位となり、硬膜外麻酔を施行する
- 仰臥位に体位固定し、全身麻酔を開始
※場合により、腰椎麻酔のみで行うこともある - 膀胱留置ドレーン挿入
- 消毒、ドレーピング
- 執刀
- 鼠径部に内外鼠径輪を含むように皮膚切開
- 浅腹膜筋を切開し外腹斜筋膜を開放
- ヘルニア嚢とヘルニア門の確認
- 下腹壁動静脈の確認
※赤・青のベッセルテープを使用することがあるので準備しておく - 精巣動静脈・精管の確保
※黄色のベッセルテープかネラトンチューブを使用することがあるので準備しておく - 腹膜前腔を剥離し、パッチをおくスペースを確保する
- パッチを腹膜前腔に留置・固定
- ガーゼカウント、器械カウントを行う 万が一、ガーゼ・器械・針・ドレーンの切れ端など、一つでもカウントが合わない場合は術者へ報告し、カウントが合うまで検索を行う
- ドレーン留置
※ドレーンの留置本数およびドレーンの先端部位を術者へ確認し、病室看護師へ申し送る - 閉創
※トータルでの出血量をカウントし、麻酔科医・術者へ報告する - 閉創後、ドレッシング
- 麻酔覚醒
- 退室
看護のポイント
麻酔
- 全身麻酔か局所麻酔
- 硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔など
※抗凝固薬内服の既往なあるなど、出血のリスクが高い患者の場合は、状況により判断される - 局所麻酔の場合でも、疼痛の管理が難しければ、途中で全身麻酔に変更することもある
体位
- 仰臥位
トラブルへの対応(器械出し看護師)
- 腹膜前腔にガーゼを挿入するため、適宜ガーゼカウントをあわせる
- パッチの留置がうまくいかなかった際、パッチを生理食塩水に浸し形を整える
トラブルへの対応(外回り看護師)
- ヘルニア門の大きさによりパッチの種類・サイズが決まるため、スムーズに渡せるよう種類・サイズを準備しておく
術後のドレーン管理
- 移動時にドレーンなどの付属物が抜去されないよう注意する
病室への申し送り事項
- 術式、トータルでの出血量、ドレーンの本数や留意部位など
- 麻酔方法、現在確保されている輸液ルートの本数および部位など
- 麻酔中に起こったバイタルサインの変化や、それに対して使用した薬剤の量や最終使用時刻など
- 体位固定(仰臥位)による影響として、後頭部・仙骨部・踵部などの発赤、上腕部の過伸展などのトラブルの有無