目的
- 高次機能障害の分類と特徴について理解する
高次機能障害の概要
高次機能とは
- 言語、記憶、認知、行為、注意、判断など、主に連合野皮質により支配される機能のこと
高次機能障害とは(学術的な定義)
特徴
- 以下の特徴から、周囲に理解されにくく、「みえない障害」と呼ばれる
- 身体障害の程度が軽度であり、外見的な障害が目立ちにくい
- 入院中より日常生活で障害が出現しやすく、医療者からも見落とされることがある
- 本人が障害を理解していないことがある
- 障害の頻度としては、認知症が最も多く(全体の92%以上)、次いで失語症(およそ90%)、半側空間無視(およそ80%)と続く
- 脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血などの脳血管障害が原因となることが多い
主な原因病巣と分類
損傷部位は絶対的なものでなく、他の部位の損傷でも障害が生じる場合がある
前頭葉
- 注意障害:「注意障害患者のケアのポイント」参照
- ブローカ失語(左側優位):「失語がある患者のケアのポイント」参照
- 社会的行動障害:感情をコントロールできず、社会的に不適切な行動をとる状態
- 自発的に行動できない、または感情を抑えられない
- すぐかっとなり大声を出す、他人や物事に興味がない、ギャンブルが好き
- 遂行機能障害:目標設定、効率的な行動、計画立案・実行ができず、物事を段取り良く進められない
頭頂葉(左優位)
- 身体部位失認:「失認がある患者のケアのポイント」参照
- 構成障害:「失行がある患者のケアのポイント」参照
- 観念性失行:「失行がある患者のケアのポイント」参照
- 失読失書:「失認がある患者のケアのポイント」参照
- 肢節運動失行:指先を使った細かい動作ができない、巧緻性が低下した状態
頭頂葉(右)
- 半側空間無視:「失認がある患者のケアのポイント」参照
- 構成障害
- 半側身体失認:「失認がある患者のケアのポイント」参照
- 病態失認:「失認がある患者のケアのポイント」参照
- 着衣失行:「失行がある患者のケアのポイント」参照
- 肢節運動失行
側頭葉(左)
- ウェルニッケ失語:「失語がある患者のケアのポイント」参照
- 聴覚性失認:
- 一次聴覚野(耳でとらえた音を認識)の障害:皮質聾(音を音として認識できない)
- 聴覚周辺野(何の音か解釈)の障害:環境音失認(聞こえる音が何の音か分からない)
- 物体失認:見ただけではその物体が何か分からない状態
側頭葉(右)
- 聴覚性失認
- 相貌失認:顔を見ただけではその人が誰か分からない状態
海馬(側頭葉内側)
- 記憶障害:記憶の3段階である「記銘」「保持」「想起」のいずれかが障害され、新しいことが覚えられない・思い出すことができない状態
- 代表的なものに健忘症がある
後頭葉
- 物体失認
治療
- リハビリが中心となる
観察項目
- 患者の基礎疾患、障害の部位の確認(CT画像など)
- 高次機能障害の種類や程度、症状の把握
- 治療方針とその内容、患者・家族の受け止めの状況
- 精神状態の把握
- 患者・家族の理解度
- コミュニケーション手段、ケア方法などの確認
- 治療内容(ST、PTなどリハビリの介入状況)、リハビリに対する意欲の把握
アセスメント
- 高次機能障害の分類と特徴について把握し、患者の病態理解に努めたか
- 個別に応じた対応をし、適切なケアが行えているか
注意点
- 高次機能障害は、学術的な定義とは別に行政的な定義があり、注意が必要である
- 行政的な定義:厚生労働省の「高次機能障害支援モデル事業」の中での定義
記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害を指す
- 行政的な定義:厚生労働省の「高次機能障害支援モデル事業」の中での定義
- 高次機能障害の患者は、周囲に理解されにくい上、本人も病識がないことが多く、周囲の理解と根気強いリハビリが重要である
社会的行動障害のリハビリ・対応について
- 発動性の低下がある場合、するべきことのリストを作成する
- 感情的になりやすい場合、行動前に一度確認する癖をつける
- 家族など周囲の人に対して、以下の点について協力を求める
- 問題の起きるパターンを分析し予防する
- 患者を責めない
記憶障害のリハビリ・対応について
- 覚えるべきことを復唱したり、すでに知っていることと関連付けて覚える訓練をする
- メモやカレンダーに記入することを習慣づける
遂行機能障害のリハビリ・対応について
- 注意障害・失語・記憶障害を伴っている場合があり、これらの問題を解決してから遂行障害に対応する必要がある
- 目標に対して、計画立案・実行する訓練を行う
- 計画は具体的に書き出し、1つずつ確実に行う
- 分からなくなったら質問するよう指導する