手術中の深部静脈血栓予防
手術中の深部静脈血栓予防【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年9月30日
最終更新日:2019年06月03日
(変更日:2019年9月26日) ※
目的
- 手術中の深部静脈血栓症を防ぐために、リスクにあわせた予防方法を実施できる
静脈血栓塞栓症のリスクレベル
低リスク
- 一般外科:40歳未満の大手術、60歳未満の非大手術
中リスク
- 一般外科:40歳以上あるいは危険因子のある大手術、60歳以上あるいは危険因子のある非大手術
- 整形外科:脊椎手術、骨盤・下肢手術、(股関節全置換術・膝関節全置換術・股関節骨折手術を除く)
- 脳神経外科:脳腫瘍以外の開頭術
- 産婦人科:良性疾患手術(開腹・経膣・腹腔鏡)、悪性疾患で良性疾患に準ずる手術、ホルモン療法中の患者に対する手術、帝王切開(高リスク以外)
高リスク
- 一般外科:40歳以上の癌の大手術
- 整形外科:股関節全置換術・膝関節全置換術・股関節骨折手術
- 脳神経外科:脳腫瘍の開頭術
- 産婦人科:骨盤内悪性腫瘍根治術、(静脈血栓塞栓症リスクのある)良性疾患手術、高齢肥満妊婦の帝王切開術、(静脈血栓塞栓症リスクのある)経膣の分娩
最高リスク
- 一般外科:静脈血栓塞栓症の既往、血栓性素因のある大手術
- 整形外科:静脈血栓塞栓症リスクのある手術
- 脳神経外科:(静脈血栓塞栓症リスクのある)脳腫瘍の開頭術
- 産婦人科:(静脈血栓塞栓症リスクのある)悪性腫瘍根治術、(静脈血栓塞栓症リスクのある)帝王切開術
静脈血栓塞栓症の付加的なリスクファクターのレベル
低
中
- 高齢・長期臥床・悪性疾患・中心静脈カテーテル留置・うっ血性心不全・呼吸不全・重症感染症・がん化学療法
高
- 静脈血栓塞栓症の既往・先天性血栓性素因・下肢麻痺・下肢ギプス包帯固定・抗リン脂質抗体症候群
静脈血栓塞栓症の内科領域におけるリスクファクターのレベル
低
- 基本リスク:肥満・喫煙者(現在禁煙も含む)・脱水・ホルモン補充療法・下肢静脈瘤・経口避妊薬服用
- 急性リスク:慢性閉塞性肺疾患の急性憎悪(人工呼吸器不要例)
中
- 基本リスク:70歳以上の高齢・長期臥床・妊娠・中心静脈カテーテル留置・進行がん・炎症性腸疾患・ネフローゼ症候群・骨髄増殖性疾患
- 急性リスク:安静臥床を要する感染症・心筋梗塞・うっ血性心不全(NYHA Ⅲ~Ⅳ度)・敗血症・人工呼吸器が必要な慢性閉塞性肺疾患
高
- 基本リスク:静脈血栓塞栓症の既往・血栓性素因・下肢麻痺
- 急性リスク:運動麻痺を伴う脳卒中
リスクレベルに推奨される予防方法
低リスク
中リスク
高リスク
最高リスク
- 間欠的空気圧迫法または弾性ストッキングと、低容量未分画ヘパリン投与の併用
総合的にリスクレベルを評価していくことが重要
最終的に決定した各リスクレベルにあわせて上記の予防法が推奨される
それぞれにリスクレベルのうち、どれを重視するかは各施設毎に違いがあるため、必ず確認が必要
予防的看護の方法
- 各リスクレベルによって推奨される予防法で手術中に行える予防法は以下の通り
弾性ストッキング
- 弾性ストッキングは、身体の中心に向かうほど圧迫圧が低くなる(血液を心臓方向へ流れやすくするため)構造をしており、効果的な圧力は、足首20㎜Hg・腓腹部15㎜Hg・大腿部10㎜Hgとされている
- 持続的に下肢を圧迫するため、皮膚の発赤・びらん・水疱・動脈血行障害・静脈還流障害・皮膚炎・足の壊死などの合併症のリスクがある
- 特に閉塞性動脈硬化症などの既往が有る場合は、合併症に注意する
- 1日に1回は、弾性ストッキングを脱いでもらい、皮膚の観察を行う必要がある
弾性包帯
- 下肢の手術や病変のために弾性ストッキングを使用できない場合や、弾性ストッキングが下肢の形状に合わない場合に使用する
- できるだけ足指に近いところから巻き、抹消から中枢へと巻きあげる
※一般的に足首を100%とすると大腿部は40%の圧で巻くとよいといわれている - 時間の経過とともに緩みやすいので、適宜巻きなおしが必要である
- 巻く際は、強さの他に、しびれ・疼痛・血流障害・チアノーゼの有無に注意する
間欠的空気圧迫法
- 弾性ストッキングよりも予防効果が高い
- 直接的な圧迫により下肢のうっ血を軽減させ、静脈弁の血液うっ滞も解消する
- 下肢に深部静脈血栓がないことを確認してから使用する
薬物的予防法
- ヘパリンやワルファリンカリウムが投与される場合があるので、医師の指示に従って正確に投与する
- 出血傾向などの副作用に注意する
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