看護師の仕事は、傷ついた心を支えるために表情や声かけが重要だったのです。すなわち、他のどのサービス業よりもマナーを重視すべき仕事ということです。
それでは私たち看護師は具体的にどのようなことを意識して振舞えばよいのでしょうか。
※ 知らなかったじゃすまされない!?看護師の社会人マナー<前編>と併せてどうぞ
看護師のための社会人マナーのポイント
ポイント1: サービス業として当たり前のことを当たり前にやり続ける
マナーのルールには、お辞儀の仕方から、名刺交換、席次など、それぞれのシーンにあわせ幅広く示されていますが、実は決まりはないのです。
「相手に不快感をあたえないための最低限のルール」が自分ではわからないため、相手の立場を考えた方法を身につけましょうということです。自分のことは自分が一番わかっていないと謙虚になることからはじまります。
相手目線で、マナーのルールはどれも共通して書かれていますから、どれかひとつを参考にすればいいと思います。
印象の良い自分になるためには、トレーニングが必要です。
やり続けると習慣化し、習慣が行動を変え、行動が人格を変え、人格が人生を変えていきます。
例えば、今月は「立ち止まってお辞儀を丁寧にする」、来月は「目線を合わせて笑顔をする」など、ひとつずつ習慣形成をしていきましょう。わかるとできるは違います。型から入ることで、心がつくられていきます。
ポイント2: 自分以外はお客様という意識で仕事をする
看護師にとってのお客様とは、玄関を出入りする全ての人です。看護を受ける人と、そのご家族はもちろん、ご見学者、業者の方も含まれます。
残念なことに看護を受ける人はお亡くなりになることがあります。わたしの看護で満足されたかどうかは伺えません。残されたご家族が評価します。自分が選んだところは良かったかどうか判断され、風評になります。サービス業の怖いところです。
自分以外はお客様という意識で仕事をしましょう。
お客様というと、病人からお金儲けをするみたいに思う方もいるようですが、良いお金がないと良いサービスは提供できません。病院長から給料を頂いているのではなく、サービス業はお客様やご家族の満足が給料になるという意識改革も必要です。
ホテルのようにチェックインとチェックアウトがなく、365日24時間暮らす施設系になると、馴れてきて自分を律することが難しい環境になります。お金を意識することは、サービスの質が保てることにもつながります。
マナーに心が加わるとホスピタリティになります。ホスピタリティの語源は、ラテン語のHospics(客人等の保護)です。ホスピタリティは英語のHospital(病院)Hotel(ホテル)Hospice(ホスピス)と様々な言葉に発展してきました。
ホスピタリティになると、おもてなしや喜びを与えることに重きをおいていますから、サービスを超えていきます。人間性や感性、個性などを重視し、報酬を求めての行動ではありません。おもてなしや喜び、感動を通じて、報酬は結果としてついてくるというと受け止めやすいのではないでしょうか。
ポイント3: 出会いとお別れのシーンを大切にする
第一印象は人の記憶に残りやすく、最初の出会いで看護を受けられるお客様とご家族との間に信頼関係をつくることは、安心感を与える上でも重要です。忠誠心を得ることもでき、クレームもなく仕事がやりやすくなります。
5秒で得られる信頼の技術を4つご紹介します。
- 笑顔
- お辞儀
- 二声(挨拶と天気や季節の話など)
- 身だしなみ
記憶に残りやすい出会いと、預けて帰らなければならない切ない心境の別れの数秒を笑顔で丁寧にお辞儀をし「おはようございます(日中はこんにちは)。良い天気ですね」や「ありがとうございます。どうぞお気をつけてお帰りくださいませ」と一言付け加えれば大丈夫です。
命を預けてもいいと思わせる誠実な身だしなみも重要です。さらに、爽やかにいつでもどこでも何度でも繰り返すことで、心を支え続けていけます。
おわりに
マナーは良薬にもなる
「看護師さんたちは優しいけど、こどもに接するようで…だから、あずけるのは嫌だったのです。私の母は大人なのです。ここは大人として対応してくださるのですね。ホテルみたいで驚きました」と言われたことがあります。
看護師には、知識・技術の前に「人としての対応力」が求められていました。
求められている優しさの表現とは、①笑顔 ②気持ちのいい挨拶 ③丁寧な言葉遣い
とよく言われ、看護師として仕事をする前に大切な教育でした。
マナーを全員の看護師ができれば深い心地よさを提供でき、本当の安心感が生まれ、究極の癒し空間がつくれるのではないでしょうか。何よりの良薬になるとわたしは思います。
やり続ければ、自分の自信になる
命の現場ですから、緊張感もあり、顔がひきつることもあるかもしれません。
わたしも、外科で走り回っていましたから、最初は止まって丁寧にお辞儀をすることさえできませんでした。日々反省し、繰り返し行うことで、マナーができるようになり、心に余裕がもてるようになりました。トラブルもなくなります。これは、マナーをやり続けることで得られる実感です。知識が増え、技術が磨かれると、自分が何でもできるような気もしてきます。
「実るほど頭が下がる稲穂かな」とある通り、マナーを意識して行い続けることにより看護師から人格者として成長でき、自分に本当の自信がつきます。
不安や悩みに寄り添い、生きていく勇気や希望を与え、人生最期に「生まれてきて良かった」と感動を与える看護サービスを、日々の表情や言葉で提供していきましょう。
それにより、私たちのほうが「看護師になって良かった」と誇りがもてるような感動を得られますよ。