今年もすでにノロウイルス流行の兆しが出始めています。
もし今、あなたの病院にノロウイルスの患者さんが来院したら、正しく対応できますか。
すべての院内スタッフが、まずはノロウイルスがどんなウイルスなのかを把握し、ノロウイルスの対策法を正しく理解し実践しなければ、患者さんはもちろん、院内スタッフの安全も守れません。
今回は、ノロウイルスがどんなウイルスなのか、看護師としてきちんと知っておきたい『ノロウイルス感染症』についてご紹介します。
ノロウイルスの感染経路について
まず、ノロウイルスとはその名の通り、ノロウイルス(Norovirus)によるウイルス感染症で、小腸粘膜でのみ増殖します。
では、ノロウイルスはどのように人へ感染するのでしょうか。ノロウイルスの感染経路をみていきましょう。
ノロウイルスの主な4つの感染経路
ノロウイルスの主な感染経路は4つあります。
1. 経口感染
ノロウイルスに汚染された飲料水や食物により感染します。(食中毒)
食べ物の場合、特に二枚貝の内臓にはウイルスが潜んでいることがあり、その中でも特に生で食べることが多いカキはノロウイルスの感染原因になることが多いとされます。他の二枚貝などでも十分に加熱していないと感染する可能性があります。
2. 接触感染
ノロウイルス感染者の下痢や吐物を処置した際に接触した際に、ウイルスによって汚染された部分、もしくは不適切な処理でウイルスが残ってしまった部分を介して、ノロウイルスが口内に入ってしまうことにより感染します。
3.飛沫感染
ノロウイルス感染者の下痢や吐物が飛び散り、周囲にいてその飛沫を吸い込むことで感染します。
4.空気感染
ノロウイルスが乾燥し飛沫核となって空中に舞い上がり、それを吸い込むことによっても感染します。ノロウイルス感染者の下痢や吐物の不適切な処理によって、ウィルスが残ったことにより起こります。
ノロウイルスのウイルス特性
上記4つの感染経路は、いずれも最終的に口に入ることで感染しますので、普通の人なら「ウイルスが口に入らないよう注意すれば大丈夫!」と思うかもしれません。
しかし、ノロウイルスのウイルスの特性は
- 増殖スピードが速い
- 感染力が非常に強い
- アルコールや熱にも強い
- 100個以下の少ないウイルス量でも発症を引き起こす
以上のような理由から、非常に厄介なウイルスと言われています。
ノロウイルスの感染を防ぐためにも、ノロウイルスの特徴をきちんと理解し対処にあたることが大切です。
ノロウイルス感染症の特徴
ノロウイルスの潜伏時期
文献にもよりますが、ノロウィルスの潜伏期間は、感染後12~48時間と比較的早いです。
それだけウイルスが口に入ったあと、急速に増えているということですね。
ノロウイルス感染の流行時期
ノロウイルス感染は1年中起こりますが、特に冬場(11月~2月)に最も多くなります。
理由は、
- ノロウイルスの生存時間が低温になるとさらに伸びるため
- 特に乾燥しているため、飛沫感染や空気感染も起きやすくなるため
そのため、特に冬季、爆発的にノロウイルス感染症として流行します。
ノロウイルス感染の症状
ノロウイルス感染の主症状は、嘔気・嘔吐・下痢です。腹痛や発熱を伴うこともありますが、血便は通常なく、あまり高い熱とならないことが多いです。
ノロウイルス感染の対症療法について
ノロウィルスはウイルス性胃腸炎の一種ですので、治療は対症療法となります。特効薬はなく、抗生剤などは効きません。
一刻も早く、腸内のノロウイルスを退去させなければ治りませんので、とにかくウイルスを出して出して出しまくるのが治療の基本です。
下痢がひどいからと安易に下痢止めを使用するとウイルスの排出が遅れ、かえって長引く恐れもあります。原則として下痢止めは使用しません。
患者さんの安静と水分補給に十分留意しながら、必要に応じて制吐剤や整腸剤を追加します。
ノロウイルス感染検査とその注意点
ノロウイルスは小腸粘膜でのみ増殖するという特徴から培養が難しく、従来は電子顕微鏡で患者さんの糞便内のウイルスを観察する方法が主でした。
しかし、最近では、より簡便で迅速なウイルス検査が可能になりました。
代表的検査方法が下記の検査方法です。
イムノクロマト法(ウイルス抗原検査)
イムノクロマト法は、安価かつ短時間20~30分で検査ができるので、病院での診断補助によく用いられます。いわゆる【ノロウイルス迅速キット】として世間に出回っている検査方法ですね。
しかし、このイムノクロマト法にも、2つの注意点があります。
- 健康保険適応の制限がある
- 結果は100%ではない
1. 健康保険適応の制限がある
この迅速検査には、以下のような健康保険適応の制限があります。
- 3歳未満
- 65歳以上
- 悪性腫瘍
- 抗悪性腫瘍薬内服中
- 臓器移植後
上記以外の人は原則として自費¥5000くらいとなります。全ての患者さんに利用できるものではないので、検査を行う前に負担額について説明しておく必要があります。
2. 結果は100%ではない
イムノクロマト法による迅速検査は、まれに偽陰性や偽陽性になることがあります。
よって、あくまで診断補助として使用し、適応については医師が判断します。
リアルタイムPCR法(遺伝子検査)
リアルタイムPCR法(遺伝子検査)は検査が簡便で高感度であることからよく用いられています。
しかし、リアルタイムPCR法には、2つの注意点があります。
- 検査結果が出るまでに2~5日かかる
- 費用が高額である
以上の理由から、医療機関ではふつう実施していません。
主に行政機関や研究機関などで、食中毒や集団感染の原因究明を目的として用いられています。
おわりに
ノロウイルスは超強力な感染力を持ち、重症化すれば命に関わる恐ろしいウイルスですがやみくもに怖がることはなく、看護師として正しい知識と対処法をもってすれば十分戦える相手です。
内閣府の食品安全委員会のサイトでも、『ノロウイルスによる食中毒予防のポイント』や『ノロウイルスの消毒方法』を詳しく紹介しています。こちらも参考にしてみてください。
さて次回は、ノロウイルスの院内感染を防ぐ!看護師のための正しい対処法について詳しく紹介していきますよ。
これから訪れるノロウイルス流行シーズン、看護師としてきちんとした知識と対応で頑張って乗り切りましょう!