今年もすでにノロウイルス流行の兆しが出始めています。
そうなると、やはり怖いのはノロウイルスの院内感染(アウトブレイク)です。入院中の患者さんは術後や抵抗力が低下している方も多く、ノロウイルスに感染すれば命の危険にさらされかねません。
実際にノロウイルスに感染した患者さんが来院した時に、院内感染を防ぐために重要となるのは、正しい対処を迅速に行うことです。
前回は、看護師として知っておくべきノロウイルス感染症についてお話ししましたが、今回はノロウイルスの院内感染を防ぐ、看護師のための正しい対処法をご紹介します。
ノロウイルスの院内感染を防ぐための5つの対処法
1. ノロウイルスを、院内に持ち込まない!
ノロウイルスの感染は一次感染以外、ノロウイルス感染者の下痢や吐物に含まれるウイルスが、口内に入ってしまうことにより感染します。
つまり、院内へ誰かがノロウイルスを持ち込まなければ、院内でノロウイルスが流行することはないわけです。まずはウイルスを持ち込まないために、以下のことを行いましょう。
面会者の制限
・ 小児、嘔吐や下痢症状の方は面会をご遠慮いただく
・ 手指消毒やマスクの着用の協力をいただく
患者さんのスクリーニング
・ 入院時に嘔吐や下痢症状がないか確認
・ ノロウイルス感染が疑わしい場合は、個室隔離を検討する
スタッフの管理
・ 健康状態のチェック
・ 手指衛生の徹底
※詳しい感染経路については、前回の”看護師としてきちんと知っておきたい -ノロウイルス感染症ってなに?”の記事をご覧ください。
2. ノロウイルス感染者の早期発見と隔離
ノロウイルス感染者の早期発見のために、嘔吐や下痢の症状がある患者さんを発見したら、ノロウイルスの可能性を必ず念頭におき、主治医へ報告しましょう。
主治医から必要があると判断されれば、ノロウイルス迅速検査キット、保健所への検体持込みによって、ノロウイルスの検査を行います。
また、ノロウイルスでなくても感染性胃腸炎を疑う症状の患者さんは、原則個室(トイレ付き)が望ましいでしょう。
3. 看護師の手指衛生の徹底と個人防護具の使用
ノロウイルス感染者のケアにあたる看護師が感染媒体とならないように、細心の注意を払うことが必要です。
前述のとおり、ノロウイルスは感染者の下痢や吐物に含まれるウイルスが、手などを介して感染するので、看護師の手指衛生の徹底と個人防護具の使用が必須です。
マスクやグローブの装着はもちろん、それらの交換も徹底しましょう。
4. ノロウイルス感染者の嘔吐物の迅速な処理
『ノロウイルス感染者が院内廊下に嘔吐!』こんな状況になったら…そこには大量のノロウイルスがまき散らかされ、他の患者さんやスタッフがノロウイルスに感染する危険にさらされてしまいます。
このような状況になったら、一刻も早いノロウイルスの正しい処理が、看護師に求められます。いつでも迅速な処置ができるように、各病棟に「ノロウイルス対応セット」を準備しておくと便利です。
ノロウイルス対応セット内容
- マスク
- グローブ
- ディスポのエプロン
- シューズカバー
- 嘔吐物凝固剤
- 密閉できるバケツ(蓋つき、なければビニール袋を2重にセット)
- 次亜塩素酸ナトリウム
- 小さいバケツ
- 使い捨てペーパータオル
ノロウイルス対応セットの使用手順
- 感染防護具(マスク、グローブ、エプロン、シューズカバー)を装着
- 嘔吐物に凝固剤を散布
- 密閉バケツにビニールをセット
- 小さいバケツに次亜塩素酸ナトリウム希釈液を作成し、ペーパータオルを浸す
- ペーパータオルで、嘔吐物を静かに外側→内側へ拭きながら集める
- バケツに汚物をまとめ、密閉する
- 十分に手指洗浄、消毒する
4. ノロウイルスの正しい洗浄と消毒方法
「とりあえず消毒!」と、なんでも消毒液に漬けて安心している施設は要注意ですよ!ノロウイルス感染者の下痢や吐物などの有機物が残っていると、その部位は消毒効果が得られなくなります。
まずは汚物の物理的除去をしっかり行ってから消毒しましょう。
ノロウイルスはアルコールが効きにくいため、消毒には次亜塩素酸ナトリウムを使用します。
- 下痢や吐物による汚染部位の消毒:0.1%(1000ppm)
- 上記以外の汚染されていない部位の消毒:0.02%(200ppm)
次亜塩素酸ナトリウムを釈した場合の保存期限は24時間です。
5. ノロウイルスに関する院内スタッフの教育
これまでに述べた1~4の対処法は、看護師はもちろん、看護助手、清掃業者、コメディカルスタッフも知っておく必要があります。
ぜひ、院内でノロウイルスの研修会を開催し、スタッフみんながいつでもどこでもノロウイルスの正しい対処法が実践できるようにトレーニングできるといいですね。
おわりに
ノロウイルスの正しい対処法を知り実践することは、患者さんの安全を守ると同時に自分の身を守ることにつながります。
最初にもお話しましたが、ノロウイルスの院内感染が起これば、患者さんの生命を危険にさらしかねませんし、その終結のために莫大な労力と費用を要することになります。
予防に勝る治療はありません。これからのノロウイルス流行時期を乗り切るために、ノロウイルス対策は看護師だけでなく、ぜひ院内全体で取り組んでいただけることを願います。