コトノさん (男性) からのお悩み

現在、看護師4年目の男性です。
1年目は総合病院の消化器、泌尿器、外科病棟で勤務。もともと緩和ケア病棟に興味があり自身が希望した科だったので充実して学び、働く事ができていました。しかし、日々の多忙さや人間関係が原因で1年8ヶ月で退職してしまいました。
次の就職先は看護多機能型施設です。難病という分野に引かれ就職。訪問看護を行っています。そこで勤務して1年、どのようにキャリアプランをたてるか悩んでいます。
いまのところ方針としては難病看護師という資格をとりその後、難病に力を入れている病院に転職予定です。受験資格の関係もありあと約3年は現在の職場で働く予定です。その間に在宅の研修に行ったり福祉用具プランナーや呼吸療法士資格を取得予定です。
難病看護師は民間資格であり余り何かの役に立つ訳では無いかもしれませんが、自分の得意な分野が欲しいという想いがあり取得予定です。また将来的に皮膚・排泄ケア認定看護師も取得予定です。
自分に自信が無いため日々、勉強の毎日です。現状のキャリアプランをどう思われますか。また転職予定の病院が皮膚・排泄ケアの受験資格の得られない所なのでまた転職する必要があることも不安です。
椿(ツバキ)からの回答
「資格取得」の先に何があるのか。キャリアプランは「その先」も視野に入れて

コノトさん、お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
まずは、お悩みを整理
コノトさんのお悩み、拝見しました。
新卒で入った病院を1年8か月で退職、「難病看護」に惹かれ、現在の看護多機能型施設へ転職し、いずれは難病看護師を目指したい。さらに将来的には皮膚・排泄ケアの認定看護師も取得したいというキャリアプランへの意見が欲しい、ということでしょうか。
率直にいえば、コノトさんのキャリアプランは、実現できればすばらしいと思います。
ただ、椿としては最後の部分、「次の転職先が本当にここで良いのか」を悩んでいるように感じました。
難病看護が先か、皮膚・排泄ケアが先か。そもそも何故、皮膚・排泄ケアなのか。
現在4年目、いずれは2つの上位資格(1つは民間資格ですが)を取得したい、というキャリアプランはすばらしいと思います。ただ、なぜ「難病看護師」と「皮膚・排泄ケア」なのか。なぜ、「緩和ケア」や「在宅ケア」、あるいは「訪問看護」や「摂食嚥下障害看護」ではなかったのか?という疑問を、少なからず抱きました。
共通部分が多いのでしょうか。それともまったく別の方向を向いているものなのでしょうか。前者であればこの2つの資格取得を目指すのは得策だと思いますが、後者であれば、「その道のプロ」としてのスキルを2つもつことになりますから、並大抵の努力だけでは難しいかなと思いました。
というのも、日本の医療制度が「病院から在宅へ」と移りつつある現在において、難病患者さんも自宅療養する方は増えるでしょうし、緩和ケアや看取りの段階にくるまではやはり自宅で生活されるでしょうから、そこで適切な対応をするのが「難病看護師の役割」ではないか?と思ったからです。
特に神経難病を抱える方は、患者さんご自身だけではなく、ご家族も病気とともに生活していくことが必要ですよね。難病の種類にもよると思いますが、難病看護は、必ずしも看護師の力だけでは成り立ちません。専門医+かかりつけ医、理学療法士、場合によっては薬剤師などの医療者だけではなく、介護士や介護支援専門員、行政(保健師かな?)などとも密な連携をしていく必要があるのかなと思います。
こうしたことを考えると、本当に「皮膚・排泄ケアなのか?」という疑問が出て来たわけです。
それから、資格取得の順番も気になりました。今働いているところでもう少し経験を積めば取りやすいから「難病看護師」を取得する、という理由なら、それもアリだと思います。難病看護師と各認定看護師は資格取得への道筋も違いますし、勉強する内容も違います。ですから、まずは1つ、どちらかの資格を取得してから、次のステップに進むというプランは良いと思います。
ただですね、椿の本音をいえば、難病看護師の仕事って、人間性とか懐の広さとか、ある程度年齢を重ねることで見えてくるものもあると思うのです。文字や数字で表すことができない、「その人のパーソナリティ」がモノを言う部分って、ありませんか?それならば、「認定看護師」という専門性を身に着けた上で、難病看護師を目指すという道程も、有るのかなと思いました。
転職の回数は別に良い、ポイントは「自分が何をしたいのか」
さて、コノトさんのお悩みに話を戻します。
キャリアプランとして考えれば、椿の意見としては「すばらしい」です。しかし、コノトさんのお悩みを拝見する限りでは、「資格取得」が目的になっているように感じます。
「難病看護師」と「皮膚・排泄ケア」は、おそらく死にもの狂い(という程なのかは人によりますが)で勉強すれば、資格取得はできるでしょう。ましてや(これ書くと、セクハラとか言われそうですけど)コノトさんは男性ですから、女性看護師にありがちな「人生の上での職業ブランク」も無さそうですから、「●●年までに資格取得」などの目標は達成できるのではないでしょうか。
そのために、少なくとも2回の転職が必要だとしても、それは特に問題では無いと思います。自分が学びたいこと、極めたいことを目指すわけですから。
それより大事なのは、「自分が目指す看護師像」を、コノトさんがどう描いていけるのかです。
まとめ
椿はよく、学生さんのお悩みに対してこう答えています。
看護師になることを目標とするのではなく、どんな看護を提供したいか、看護師としてどう働きたいか、どう生きていきたいか、それを考えること。
コノトさんは、まだ4年目。これから先、もっともっと勉強して、自分に自信を付けて大きく羽ばたいてほしいです。その方法の1つが資格取得なら、それもすばらしいキャリアプランでしょう。
でもその先には、コノトさんを待っている患者さんがいます。資格取得のためだけに転職するのではなく、「自分が看護師としてどうしたいか」をじっくり考え、進む道を選んでください。