目次
目的
- 手術の流れを理解し、適切な器械操作および手術介助ができる
- 手術の経過を把握し、緊急の場合に備えることができる
手術の概要
- 再発が多いため、根治性と機能温存についての検討がなされる
- 麻酔がかかってから、初めて正確な所見が明らかになることもある
- ジャックナイフ位や砕石位で行うことが多く、また術中は患者が覚醒している場合もあるため、羞恥心への配慮が重要なポイントになる
術前評価と患者の特徴
術前評価
- 術前評価として、主に以下の検査を行う
- 血液検査:感染症の確認、肝機能・腎機能・凝固能・耐糖能・貧血や栄養状態の評価を行い、必要な場合は輸血や栄養状態の改善を図る
- その他:呼吸機能検査、胸腹部X線検査、負荷心電図など
患者の特徴
- 痔核は結紮切除術、痔瘻は痔瘻根治術が適応となる
- 術前には経口摂取制限が行われているため、脱水・低栄養・電解質異常などをきたしていることがある
手術の流れ
痔核の結紮切除術の場合
- 患者入室後、モニター症着
- 麻酔を施行する
※低位腰椎麻酔・仙骨硬膜外麻酔など - 体位を固定する
※ジャックナイフ位・砕石位・側臥位など - 消毒、ドレーピング
- 場合により、エピネフリン加生理食塩水(エピネフリンを高倍率に希釈)を皮下注射する
- 皮膚・直腸粘膜を切開する
- 痔核を剥離し、痔動脈の結紮切離を行う
- ガーゼカウント、器械カウントを行う
- 直腸粘膜・皮膚の縫合・閉鎖
- 必要な場合はドレーピングを行い、体位を仰臥位に戻す
- 退室
痔瘻の痔瘻根治術の場合
- 基本的には結紮切除術に準じるが、上記手順の7.~9.の手順が少し変わるため、術者へ確認する
看護のポイント
麻酔
- 低位腰椎麻酔・仙骨硬膜外麻酔・局所麻酔
※抗凝固薬内服の既往なあるなど、出血のリスクが高い患者の場合は、状況により判断される
体位
- ジャックナイフ位・砕石位・側臥位
トラブルへの対応(器械出し看護師)
- 止血のために、バイポーラ型電気メスを準備しておく
トラブルへの対応(外回り看護師)
- 意識下の場合は、声かけを行い苦痛や不安の軽減に努める
- 術中からの出血量に留意し、止血が確認できているかを把握する
- 照明の調整
術式変更の準備
- 麻酔後に初めて所見が明らかになることもあるため、病変数が増えることも想定しておく
- 痔瘻根治術として、開放術式・括約筋温存術式・痔瘻結紮療法などを理解しておく
術後のドレーン管理
- 術後早期の大量出血に注意する
病室への申し送り事項
- 術式、トータルでの出血量、ドレーンの本数や留意部位など
- 麻酔方法、現在確保されている輸液ルートの本数および部位など
- 術中に使用した輸血や血液製剤など
- 麻酔中に起こったバイタルサインの変化や、それに対して使用した薬剤の量や最終使用時刻など
- 体位固定の影響による皮膚異常などのトラブルの有無
※ジャックナイフ位
前額部・頬部・顎部・肋骨・前腸骨・膝蓋部・乳房(女性)・性器(男性)
※砕石位
後頭部・仙骨部・踵部
※側臥位
肩関節・肘関節・肋骨・腸骨・大転子部・膝蓋部・踵部 - 術後早期に起こり得る出血は大量出血となることが多く、ショックの原因となるため、止血が確認できているかを把握し、申し送る