目的
- 頭蓋内圧亢進の兆候を早期に発見し、生命の維持を図り、2次的機能障害や合併症の予防に努める
- 患者・家族が障害を受容できるよう支援し、残存機能を生かしADLの維持拡大を目指して社会復帰できるよう援助するする
疾患の概要
脳出血とは
- 突発的に脳実質の破壊を起こし、脳内を出血成分で占拠する疾患をいう
- 現在の日本での発生頻度は、脳卒中全体のうち約2割弱である
- 脳内のさまざまな部位で発症するが、一番多いのが被殻出血である
原因
- 高血圧が原因で発症する事が多い(高血圧性脳出血)
- 腫瘍、外傷、血管奇形、膠原病、凝固異常症などでも起こることがある
- 被殻出血の場合、レンズ核線条体動脈が破綻して起こる事が多い(この動脈はラクナ梗塞の好発部位で、高血圧患者では出血・梗塞の両方が起こる可能性がある)
分類
出血の好発部位は被殻(全体の4割)、視床(3割)、皮質下、小脳、脳幹である
症状
- 脳出血の発生する部位によって、起こりうる症状は異なる
- 突然の運動麻痺や感覚障害・失語などの局所症状をもって発症、頭痛・嘔吐・意識障害を伴う
- 神経症状は出血部位により様々、血腫周辺に生じる脳浮腫のため、数日~1週間は症状が悪化することがある
診断(被殻出血の場合)
- CT所見:高吸収域として認められる
- 被殻付近には内包があり、内包後脚には随意運動の伝導路である錐体路が通っているため、血腫が内包まで拡がっていないか確認する事は、後遺症の推定をする上で重要となる
治療
治療方針の決定
- 治療方針の決定には、CTによる出血部位の確認と意識レベルの評価が重要である
- 脳出血に対する急性期手術は切迫する脳ヘルニアを避ける救命目的が主で、症状改善は期待できない場合が多い
急性期の内科治療
- 呼吸・循環管理(血圧管理による再出血予防と低酸素脳症による二次損傷予防)
- 輸液管理、血腫に伴う脳腫脹・浮腫に対する脳圧降下薬の投与
- 合併症の予防(脳性:脳浮腫、けいれん、全身性:意識障害に伴う呼吸器合併症、感染、消化管出血)
外科的治療
- 外科的治療の適応は、神経症状と出血の部位・血腫量により決定する
- 脳ヘルニアの原因が何かによって選択する術式が異なり、血腫に対する血腫除去術か、急性水頭症に対する脳室ドレナージである
- 血腫除去術の目的は、血腫を除去することで血腫そのものによる頭蓋内圧亢進や脳浮腫によって生じる二次損傷を減少させることにある
回復期治療
- 高血圧や他の基礎疾患の治療およびリハビリテーションが主体となる
観察項目
- 意識レベル、神経症状、眼所見(瞳孔・対光反射)の観察
- 出血部位による症状の観察
- 血圧や呼吸状態の変動
- 検査所見の確認(CT・MRI画像、血液検査、胸部レントゲン写真など)
- 治療方針や説明内容の確認、本人・家族の受け止めの状況
- 合併症の兆候の有無
- 精神状態、ADLの確認
アセスメント
- 出血部位により出現する症状、治療方針が異なるが、十分に把握しているか
- 急性期は、血腫の増大、血腫周囲の脳浮腫による症状悪化に注意し、意識レベルや神経症状の変化を見逃さないなど、異常の早期発見に努めたか
- 症状や検査結果などから、今後起こりうる合併症を予測しているか
- 血腫増大・脳浮腫の出現に伴い、呼吸循環動態の観察・管理を十分に行い、バイタルサインの変動チェックや血圧管理、酸素投与を行っているか
合併症予防
- 二次的合併症は、感染(誤嚥性肺炎、尿路感染など)、消化管出血、関節硬縮・筋力低下、褥瘡などが挙げられるため、予防的にケアしていくことが重要となる
- 回復期は脳出血による運動性障害に対して、最大限の身体運動性を維持・拡大できるよう、リハビリや生活指導を行う
注意点
- 抗血栓薬を内服している患者は特に血腫が増大するリスクが高いため、注意が必要である
- 急な発症のため、患者・家族の不安に対する個別的なケアが重要となり、治療・ケアに対する十分な説明、精神的支援を十分に行う
- 疾患に起因する意識障害の他に、環境の変化により不穏となる患者も多く、言動に注意し事故防止に努める