くも膜下出血患者への対応

くも膜下出血患者への対応【いまさら聞けない看護技術】
公開日:2013年6月18日
最終更新日:2013年6月18日
(変更日:2016年12月22日) ※

目的

合併症の徴候を早期に発見・予防し、生命の維持を図る

疾患の概要

くも膜下出血(SAH)とは、脳を覆うくも膜の間に出血をきたす病気である

原因

  • 原疾患としては、中高年~高齢者では脳動脈瘤が最も多く(80%以上)、若年者では脳動静脈奇形が多いといわれている
  • その他、脳出血、もやもや病、脳腫瘍、脳血管炎、外傷などの原因でも発症する

症状

  • 突然起こる、バットで殴られたような激しい頭痛が特徴
    ※人によっては軽度の場合もあるため注意が必要
  • くも膜下出血によって動脈血が頭蓋内に充満すると、頭蓋内圧の亢進により、悪心・嘔吐・けいれん・意識障害などが出現する
  • 髄膜刺激症状(頚部硬直、ケルニッヒ徴候)は、発症直後には認められないこともある
  • 意識障害の程度は予後と強く相関しており、意識障害が強いほど予後が悪い
  • くも膜下出血の重症度の分類には、Hunt and Kosnik分類などが用いられる(Gradeの高いもの程予後不良)
髄膜刺激症状とは
●頚部硬直(頭部を持ち上げる時のみ 明らかな抵抗や疼痛がある)
●ケルニッヒ徴候(両下肢ともに抵抗があり、膝関節を135°以上伸展できない)

診断・検査

  • くも膜下出血を疑ったら、初期診断としてまず頭部CT検査を行う
    • クモ膜下槽への血液流入が確認でき、脳底槽やシルビウス裂がヒトデ型の高吸収域になる
  • 出血量が少量、または時間が経過した亜急性期のくも膜下出血では出血による高吸収域が認められないことが多いが、MRIのFLAIR像で高信号病変が認められる可能性があるため、症状や診察所見において、くも膜下出血が強く疑われる場合は、頭部MRIを施行する
  • くも膜下出血と診断が確定したら、手術を前提として原因や破裂部位を特定するため、脳血管撮影を行う
  • 症状からはくも膜下出血が疑われるのにCT所見がはっきりしない場合、腰椎穿刺をして髄液検査を行い、血性髄液の確認をする
    ※頭蓋内圧が亢進することによる脳ヘルニアのリスクがあるが、くも膜下出血の診断を優先させる

治療

  • 最大の目的は合併症を防ぐ事により、生命の危機を脱する事にある
  • 開頭クリッピング術などの手術が適応となる場合、脳血管攣縮期前(発症後72時間以内まで)の早期に行う

術前管理(動脈瘤処置までの待機期間)

  • 再破裂による出血・脳ヘルニアを防ぐことがもっとも重要となる
    • 血圧管理:降圧薬の使用
    • 頭蓋内圧管理:抗脳浮腫薬(グリセロール、マンニトールなど)
    • 鎮痛・鎮静:呼吸管理を行うと共に、意識障害のある患者は強力な鎮静、けいれんに対して抗けいれん薬などの使用

手術

  • 再出血の予防と、血腫除去による脳血管攣縮を予防する目的で行われる
    • 動脈瘤頚部クリッピング術:開頭し直接動脈瘤をクリップで挟んで止血する
    • 動脈瘤コイル塞栓術:大腿動脈から血管内カテーテルを脳動脈瘤内まで到達させ、瘤内に金属製コイルを充填する

術後管理

  • 脳血管攣縮による脳虚血の予防が重要となる
  • 治療法の一つにtriple H療法がある
    • 循環血液量増加(hypervolemia):循環血液量増加を図るため、輸血、アルブミン製剤などを使用する
    • 人為的高血圧(hypertension):可能な限り血圧を高めに保持するため、カテコールアミン製剤などを使用する(収縮期血圧140~150mmHg以上が目標)
    • 血液希釈(hemodilution):血液の粘性を低下させ血流改善を期待するため、代用血漿剤などにより血液希釈を行う(ヘマトクリット値 30 – 35%が目標)
  • 脳槽または腰椎ドレナージ留置・管理:手術中にドレナージを行うことで、攣縮物質とされる血腫の排出、頭蓋内圧管理を行う
  • 血腫溶解療法:脳槽または腰椎ドレナージより、ウロキナーゼやrt-PAを注入しくも膜下腔の血腫を溶解し、排出させる
  • 攣縮に対する薬物治療:ファスジル塩酸塩水和物やオザクレルナトリウムを静脈投与する

亜急性期から慢性期治療

  • 脳血管攣縮を起こした後は、脳虚血や脳梗塞へと移行することもあり、これらを発症した場合はそれぞれの病態に応じた治療が行われる
  • 正常圧水頭症に対するシャント術の施行:くも膜下出血後、数週間から数か月して、髄液吸収障害に伴う水頭症(続発性正常圧水頭症)を来たす場合がある
脳血管攣縮(バゾスパズム)とは
●くも膜下腔に出血した血中成分により血管の狭小化が起こることで発生する持続的な血管攣縮
●発症後72時間後~2週間以内に起きる
●攣縮が起きると、脳虚血による脳損傷や脳梗塞を発症する場合がある

観察項目

  • 意識レベルの変動、瞳孔所見(瞳孔不同や対光反射の有無)、神経症状の有無
  • 脳虚血症状の確認(意識レベル低下、麻痺の出現、構音障害失語など)
  • 血圧・呼吸状態、水分出納量の確認
  • くも膜下出血の程度、動脈瘤の部位の確認
  • 脳槽・腰椎ドレーンの観察(流出状況、性状や色の変化による感染兆候の有無)
  • 治療方針などを説明した後の、患者・家族の受け止め方や精神状態の変化

アセスメント

  • 動脈瘤処置までの待機期間・術後・慢性期にわたり、それぞれの病態に合わせたケアが必須となるため、今患者がどの時期にあたり、どんなリスク・問題点を抱えているのか常に把握しているか
  • 再出血が起こるごとに患者の予後は著しく悪化するため、出現する症状を予測し、ケアの実施時には十分注意して行っているか
  • くも膜下出血発症後は、再破裂による出血のリスクが高いことを理解し、刺激を極力避けるようケアも最小限にとどめる努力をしているか
  • ドレーン留置中は感染に注意し、患者が不穏を伴う場合は抜去などの事故に十分注意できているか

合併症予防

  • 患者の経過に合わせた合併症予防策を実施する
  1. 動脈瘤処置までの待機期間
    • 再出血、頭蓋内圧亢進の防止(血圧管理、安静、呼吸管理)
    • 再出血の徴候の早期発見(意識消失、急激な神経症状の悪化)
    • 対症看護(頭痛や嘔吐に対する薬剤使用)
  2. 術後合併症予防
    • 術後出血、脳浮腫、けいれん、創感染、深部静脈血栓のケア
  3. 脳血管攣縮期
    • 脳血管攣縮を起こすとおよそ1~2割の割合で、何らかの後遺症が残る
    • 脳血管攣縮やこれによる脳虚血の予防が重要
  4. 慢性期
    • 脳槽・腰椎ドレーン抜去後、水頭症の症状の早期発見(認知症、尿失禁、 歩行障害)

注意点

  • 脳血管攣縮に注意し、確実な治療を行い、脳梗塞を予防していく必要がある
  • 急激に意識レベルの低下が認められた場合、頭部CTを施行し、動脈瘤再破裂や急性水頭症や脳ヘルニアなどの有無を判断する
  • 疾患の発症は急激であり、患者・家族は動揺が強いため、緊急対応の中でも丁寧な説明や精神的配慮が必要となる
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